青の輪郭|#8|青い炎
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この連載「青の輪郭」について詳しくは下記をご参照ください。
【これまでの連載】
0話|プロローグ
出発地点として借りたのは、東池袋駅徒歩1分の雑居ビル。
▼第1章 バイバイ、マイ・チャイルドフッド
1話|You Know You’re Right
高校1年の春、16歳。毎月のように変わっていく世界の見取り図。
2話|幻のツーベース
野球を愛する者だけの間で交換される感情と経験。
3話|図書館の森、リノリウムの木漏れ日
読書への目覚め、ある一冊との衝撃的な出会い。
▼第2章 スローカーブが描く憂鬱
4話|アルトサックスと坂口安吾
本気で何かに打ち込める残りの期間を数えながら。
5話|替え玉さまよ、永遠に!
練習後のラーメンがぼくらに教えてくれたこと。
6話|避難小屋としての読書
本の中のハイパーリンクを片っ端から踏みまくる。
7話|10月にマウンドでぼくは誰かに話しかけたかった
本と野球、この2つが自分の中で空中分解しそうな矢先に。
8 青い炎
鼻は折れておらず、その他にも大きなケガはなかったが、あの12連コンボを食らってから試合に出させてもらえなくなっていた。それだけでなく、ナカさんは度々ぼくにだけ手を上げるようになっていた。
グラウンド整備でまっさきにトンボを手にできなかったとき、ベンチワークが遅れたとき、人よりも長く水を飲んでいたとき、彼は怒声とともにぼくを呼び出し、強く突き飛ばし、殴った。もはやきっかけはなんでもいいみたいだった。殴ったあと、罰として学校の外周ランニングを命じると、にやりと笑みを浮かべながら「お前らな、武田みたいになるんじゃねえぞ!」とチームメイトにいい渡した。
通常、罰の厳しさは罪の度合いに比例する。けれど、ぼくが犯したミスに対して、ナカさんがふるう拳の強さや数は必ずしも比例しない。不思議だった。けれど、何度も殴られているうちにわかったことがある。彼は殴るという行為そのもの以上に、みんなの前でぼくに罰を下すことを重要視していたのだ。