メディア風景論×自伝的フィクション『青の輪郭』の連載を開始します
数年前から「本を書いている」と時たま話していましたが、今回ニュースレターにて連載をスタートすることにしました。タイトルは『青の輪郭』。
苦悩の高校野球と上京、大学での「闘争」、仲間との雑誌づくり、編集修行、メディアプロダクション・KAI-YOUの創業、メンタルヘルスの危機、狂騒のスタートアップカルチャー、音楽メディアの立ち上げとその倒産、そして──。
18歳で上京した「ぼく」の視点で、ゼロ年代〜10年代の東京の町を駆け抜けながら眺めた風景と、そこで出会った仲間たちとの冒険を記す自伝的青春小説、といった作品となる予定です。
『青の輪郭』ニュースレター(連載)版について
隔週土曜日を目安に(月2回)、その週の最新エピソードをメールにてお届けします。購読いただくと、Webより購読開始以前のエピソードも読むことができます。
月額の購読料は480円。連載終了後にはNUMABOOKSからの書籍版の出版が決定しています。
3ヶ月以上購読された方には、書籍版出版時に本書を定価の60%の価格でご購入いただけます(購入方法などは出版時に改めてご案内いたします)。
『青の輪郭』あらすじ
2000〜2010年代、雑誌・Web・動画をはじめとするメディアの目まぐるしい位相の変化、SNSの勃興と膾炙、インターネットの大衆化。あらゆるメディアをとりまく過渡期のなかで青春時代を過ごし、そのうねりの一端として自らもメディアの現場に身を投じていた著者が見た狂騒の風景と、自己を見失ってから再び築き直すまで。メディアリサーチャーとしても活躍する1986年生まれの著者による、自伝的フィクション。
連載開始にあたってNUMABOOKS代表・内沼晋太郎よりコメント
人にはみな多かれ少なかれ、いろいろな過去があり事情がある。けれど武田俊ほど過去があり事情があり、それらが散らかっているようで不思議と一貫していて、かつこれほど豊潤な、あふれるほどみずみずしい文章を書く人は、たぶんいない。一種のメディア論として書きはじめてもらったのに、そのうち自然とこれは小説かもしれないねということになって、ぼくも読むのが俄然楽しみになりました。
(うちぬま・しんたろう/NUMABOOKS代表)
『青の輪郭』書籍版について
発行元:NUMABOOKS
発売時期:2023年初夏(予定)
価格・仕様:1,800円+税/四六版上製(予定)
発行人:内沼晋太郎
編集:後藤知佳(UMISHIBAURA)
著者から読者の皆さんへ
いよいよ始まるのかあ、と思うとちょっと緊張してきました。実はこの企画、さかのぼること2018年に話が動き出していたんです。また本編でも触れるかもしれませんが、とある中規模出版社の編集の方から「本を書いてみませんか!」と連絡が届きました。
これはうれしい!なんせはじめての単著なんですから。
それでおっかなびっくり書き始めたんです。当初はぼくのこれまでの仕事を振り返りながら、当時のメディアと町のことをエッセイのような形で書いていくという形式でした。8000字ほどのエッセイを2本、原稿用紙40枚ほど書いた時に突然しらせが届きます。
なんでもその版元が新人の書籍企画から一切手を引くという決定を下し、ぼくの本の企画もなかったことになってしまったんです……。もちろん担当編集の方はなんとかできないか尽力してくださったんですが、どうにもならず。社の決定に納得いかない書籍編集者たちが、一同に退社するという騒動にまでなってしまいました。
そこから紆余曲折あり、内沼さん、後藤さんが力を貸してくださり、今回のような形になりました。
書き下ろしという方法も検討したのですが、連載という形で本になるまでの過程からみなさんに見てもらいたい、関わってもらいたいという気持ちがありました。どこか外部のメディアに持ち込むことも考えましたが、せっかくメディアに携わる仕事をしている身、何か新しいトライがしたいなあと思って、有料ニュースレターでの連載→書籍化という形を思いつきました。
購読料について
今回、月額の購読料を480円としてみました。
これ、結構チャレンジです。サブスク全盛の時代。すでに多くの人が様々なサービスに加入している中、毎月お金をいただくというのはどうなんだろうか。ぼくのはじめて書く作品は『ストレンジャーシングス』や『梨泰院クラス』と比べてどうなのか、オリヴァー・シムの初ソロアルバム(めっちゃいいので聞いて!)のように楽しめるのか。金額ふくめ、いろいろ迷いました。
この売上は、担当編集・後藤さんと、著者・ぼくで折半されます。つまりみなさんからいただいたお金は、企画・編集費+原稿料ということになります。大げさなことを言えば、これはフリーランスの編集者とフリーランスの著者が、既存メディアに頼らずオルタナティブな形で制作費を稼ぎ、オルタナティブなまま書籍化まで持っていく、というチャレンジでもあるのです。
そう考えると、上に挙げたメガタイトルと比べる必要なんてなかったなあと思いました。これから『青の輪郭』で書かれるのは、ぼくの極めてパーソナルなストーリーであり、つまりむき出しのハードコアです。それをていねいに探りあて、みなさんひとりひとりに語るようにして書いてみたい、そう思ったんです。
だから480円という値段は、そうですね。
たとえばこんなイメージの買い物かもしれません。
ちょっと替えが効かないなあという馴染みのカフェで楽しむ、コーヒー一杯。
生産者から直接届けられたすばらしく瑞々しい無農薬の梨(梨、好きなんです)ひとつ。
ささやかで、でもささやかだからこそ、その日の生活を祝福するような楽しみのこと。
そんなものたちとこそ、肩を並べるものでありたい。
顔が見える距離で、直接に品物とお金とがやりとりされる心地よい関係。それはもうずいぶん忘れてしまったけれど、資本主義が本質的に持つ楽しさでもありますよね。そういう距離感で、まずぼくはこのパーソナルな物語をみなさんに届けたいと思います。
ずっと本を書くことに憧れてきました。
だいぶ回り道をした気がします。でも、いよいよです。
いよいよ、ぼくが語る番がやってきたのです。
武田 俊(たけだ・しゅん)
文筆家/メディアリサーチャー
名古屋市生まれ。大学在学中にインディペンデントマガジン『界遊』を創刊。編集者・ライターとして活動を始める。2011年、代表としてメディアプロダクション・KAI-YOU,LLC.を設立。「KAI-YOU.net」の立ち上げ・運営のほか、カルチャーや広告の領域を中心にプロジェクトを手がける。2014年、同社退社以降「TOweb」「ROOMIE」「lute」「M.E.A.R.L.」などのWebマガジンにて編集長を歴任。2019年からJFN「ON THE PLANET」月曜パーソナリティ、法政大学文学部にて「情報メディア演習」を担当。デジタル、紙、物理空間など多様なメディアを横断し、ナラティブで繋ぎ合わせる手法を探究中。右投右打。
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