青の輪郭|#3|図書館の森、リノリウムの木漏れ日

読書への目覚め、ある一冊との衝撃的な出会い。
武田俊 2022.10.08
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  • この連載「青の輪郭」について詳しくは下記をご参照ください。

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3 図書館の森、リノリウムの木漏れ日

 真新しい硬式用グラブの入った袋を左肩から下げ、図書館の扉を開ける。
「野球をやるなら利腕の肩に荷物をかけないなんて常識だぞ」と注意されてから3年間、右肩から荷物を下げたことはない。
 入り口から奥に向かって長方形状に広がる図書館は、入ってすぐ左側にアールの効いた貸出カウンターがある。そばには背の低い書棚が島のような形に並んでおり、学校史に関する資料や雑誌、マンガ──ただし『はだしのゲン』みたいな教材としての価値が認められたものに限る──が並んでいる。
 窓際にはカウンター席がずらりと並び、主に放課後、自習のためにやってきた優等生たちが行儀よくそこに並んで勉強していた。
 今日も8人ほどがカウンター席に並んで、熱心にノートを広げている。
 彼らの邪魔をしないよう足音を立てず通り抜け、図書館の最深部へと足を進める。
 そこは人文書が立ち並ぶエリアで、あまり生徒が立ち入らない場所だった。書棚の背丈も一回り高く、棚の間に人がいるかも遠目ではわからない。まるで本の森のようで、毎回借りたいと思う本を探す時には、森に分け入る狩猟採集民のような気持ちにさせられる。

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