青の輪郭|#1|You Know You’re Right
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この連載「青の輪郭」について詳しくは下記をご参照ください。
第1章
バイバイ、マイ・チャイルドフッド
わたしは今、最高にナイスなきもちだ。
わたしはギャングだったんだ。わたしは詩人なんかではなかった。わたしは生まれてからずっとギャングだったんだ。
わたしは今からそれを証明しようとしている。
わたしはわたしの心臓に一発ぶちこんだ後、すごくナイスな、すごくすごくナイスな気もちでめざめるだろう。
今、それがわかる。
この、すごくナイスな今に。
何よりもナイスな、ナイスな、ナイスなギャングであることが。
すべてのティーンネイジャーは、瞬間を生きている。
だから大人たちは、彼らを学校に入れ、集団で毎日同じように生活させる。
瞬間の持つきらめきに魅せられて、死んでしまうことがないように。
スクールメイトとともに成長を遂げ、乱暴な世界と向かい合うことができるように。
2003年、16歳だった。
永遠に向かって唾を吐きながら瞬間を生きていて、だから毎日イライラしていた。
世界はきっと途方もなく広大なはずで、見たこともないような風景に満ちているはずで、にもかかわらず、暮らしの中で触れ合うその輪郭の単純なパターンに飽き飽きとしていた。
ティーンネイジャーはこの時期、世界を探索するための鍵に出会うことがある。
ある人にとってそれは、兄のお下がりのギターだったり、幼少期から続けているバレエだったり、量子力学の入門書だったりするのだろう。
ひょっとすればある人にとっては、それが幼児の脱いだあとの靴下だったり、昆虫を虫眼鏡で焼く時の匂いだったり、真っ白い壁紙に飛び散った血しぶきだったりするのかもしれない。
だからぼくは、幸運なティーンネイジャーだ。
だって16歳で、2本ものまっとうに思える鍵を見つけることができたのだから。
ぼくが見つけ出したその鍵は、図書館で偶然手にした1冊の本と野球だった。
1 You Know You’re Right
愛知県を俯瞰してみると、左を向いた小型の肉食恐竜に見える。知多半島が前足で、渥美半島を後ろ足としてみれば、そこにあるのはずんぐりむっくりした恐竜の形だ。