いつもと違う移動はすべて旅

空中日記 126|目を閉じてごらん、着陸するから
たけだ 2026.02.04
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✏️日記のまえがき

それはが義実家への帰省のための移動だとしても、日常的ではない移動はすべて旅情を帯びる。それがたとえアクアラインのひどい渋滞だったとしても、ひとりで帰路につく前に立ち寄ったデニーズのフライドポテトでも、あとから振り返ればすべて旅の思い出になる。

そこにその時々に読んでいる本があれば、なお特別なものになる。すべての風景が本の背景になる。そういうのはいいなあと思う。10代、今よりももっと切実に本を読んでいたとき、生活の中で出会う風景はすべて、その時読んでいる本のための舞台装置のように見えていた。風景は本にかしづいていた。本を際立たせるために機能しているのならば、代わり映えのないクソみたいな日常も愛せる、と思っていた。

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✈️空中日記 126|目を閉じてごらん、着陸するから

12月29日(月)

年末年始のアクアラインを甘く見ていた。アクアラインそのものではなく、浮島ジャンクションの手前15キロの渋滞。アクアラインに入るのに2時間以上かかる。少しで車間が開くと、列を並ぶことを回避してハイエナのようにすき間を探しているずるい車に入られてしまう。

我々の3台先にいるデミオがお人好しで、もう4台ほどがその前に割り込んでいく。それでやるせない気持ちになる。デミオ、きみがいいひとなのはわかるけど、後ろに並ぶひとたちのことを考えてみたことはあるかい。そういうとどんどんその青いデミオのことが嫌になり、いや、でもデミオが悪いわけではない、悪いのは列に並ばず横の車線からずっと前に進み、無理矢理割り込むようにしてくる車なのだ。

イオは眠っていたから、じゅんちゃんとそんな風にして話していて、イライラしつつも久々の夫婦ふたりのドライブ中の会話だった。次第に、あの横入りするやつらに裁きを──ということになり、ぼくが考えたふさわしい罰は、セントバーナードなどの超大型犬のごっついうんちをすべてのタイヤでがっつり踏み、溝の奥深くまでたいそう入り込む、というものになった。そういう刑罰。

空いている時間なら1時間半強でいける道のりを4時間かけて到着。すでに14時で、海の見えるレストランで食事。イオはアオサの味噌汁を気に入り、みどりのおみそしる、といって何度も飲んだ。良質なうまみに彼女がとても敏感で、それをうれしく感じる。

ラッシュを避けるために18時くらいに義実家を出て、少し進んだ町にあるデニーズでひとりで20時まで過ごし水野英莉『ただ波に乗る』を読んでいた。昼が遅かったのでそこまで空腹でもなく、けれど2時間ほど過ごしたいこういう時、なにを頼むべきか迷う。

自分の中の空腹以外の要素がほどよく満たされ、お店的にも2時間居座ってもまあいい客かな、と思ってもらえるようなオーダーとはなにか。結局ポテトとドリンクバーを頼み、しばらくしてからチキンのソテーのようなのを単品で頼もうとプランしていたのに、なぜか間違えてたらこスパゲティを頼んでしまい、糖質がトゥーマッチに。

『ただ波に乗る』は、著者が名古屋の出身だとわかり、一気に親近感が増す。さて、今日から記憶にないくらいだからひょっとしたら生まれて初めての、ソロ年越しがはじまるわけで、わくわくとした気持ち。

帰路、HALFBYの『The Sound Of Memory Lane』(傑作!)をかけっぱにしてたら、見知らぬ音頭が流れる。ビザールなアレンジのダンスミュージックで、断片的な歌詞や語りのフレーズを聴いていると、かつてその土地にあった音頭を復活させたものらしい。下道に降りた信号待ちの間にさっと見ると、VIDEOTAPEMUSIC『石引ゲバゲバ音頭』というもので、とても気に入りえんえんとリピートしながら進んだ。

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  • 🍿日記のおまけ

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