病みと輝き

✈️空中日記 128|「真のケアを知る者」の表情をしているよ
たけだ 2026.02.23
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✏日記のまえがき

メンタルではなく、フィジカルの不調で寝込むことが案外好きだ。ベストなのは38℃以下の微熱で、頭痛腹痛がない状態。アクティブには動けないけど、布団の中で本を読んだりするくらいならできる、という程度が最高だ。世界から少しだけ切り離されたような場所で、いつもと違う時間の中をだらだらと過ごす。

小学生4年生まで身体が弱くて、そういう時間の中で年間数十日、学校を休んで過ごしていた。みんなが教室で授業を受けている間に読む本は格別におもしろく、自分だけが違う世界を旅しているのかもしれない、と思えた。昼から飲む酒は格別だ、というのは自分は感じたことがないけれど、多くのひとがそういうのは、こういうことなのかもしれない。

病気によって生の確実性がゆらぐから、回復したあとの普段の暮らしがすばらしく思える。そういう効果は確実にあって、双極性障害当事者はそんなゆらぎの中で常に生きている。生活はいつも輝いていて、同時に、一瞬にして闇に変わる。

光と闇、祝祭と日常、瞬間と永遠。

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✈空中日記 128|「真のケアを知る者」の表情をしているよ

1月20日(火)

じゅんちゃんがダウン。突如家庭内に戒厳令がしかれたような、リビングと寝室が野戦病院のようになった。こうなったらちゃんとすることを目指さず、生命維持と回復さえできていればいいというモードに切り替える。午前、内沼さんごとうさんとの本のMTGを終えてからは、ふたりの回復の環境そのものにぼく自身がなるイメージで進めた。

イオが集中してテレビをみているすき間に、iPadで鳥トマト『東京最低最悪最高!』を読み終わる。これはすごいマンガ。出版業界勤務の経験を存分に生かした、メディア業界裏話であり、現代の東京で「クリエイティブ」な世界で仕事をすることの、悲喜こもごもがすさまじい解像度で描かれている。鳥トマトさんが気になったのは、『季刊日記』に寄せていた日記が、まったく自分では書けないタイプの文体によるすばらしかったからで、あの本の日記部門の優勝は図Yカニナさんと鳥トマトさんだと思っている。

じゅんちゃんはよく眠っている。こういうとき、回復のためにしっかりと眠れる彼女を動物として頼もしく、生物として尊敬の念のようなものを抱く。
イオ、そのそばで17時半に力尽きて遅い昼寝。

この隙に、一気にカレーをつくり、風呂を洗って湯を張り、まだ誰も起きないのでひとりで入った。湯船の中で、大江健三郎『個人的な体験』。高校生のときぶりくらいで、まったく覚えていない。冒頭、主人公がゲームセンターでパンチングマシーンに興ずるシーンなんて、はじめて読んだかのようだ。

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  • 担当編集より
  • 日記のおまけ

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