77|ことばにしないでおこう

ちいさな読みものとおしらせがあります
たけだ 2026.09.23
読者限定

 明日から後期の授業なので、いつものように編集についてぼーっと考えている。
 編集者の仕事ってなんだろうか。
 授業用や仕事用に「ぼくはこう考えているよ」と説明するフレーズがいくつかあって、でもいま、そうじゃないいいかたをしてみたくなっている。

 編集者の仕事のいちばんはじめの段階とはなにか。
 そのファーストアクションは、アイディアをまとめるとか、企画のひながたをつくるとかではたぶんなくて、ぼくなりにいうならば「良さをことばにしてみる」からはじまる、気がする。

 対象はなんでもいい。
 今期のアニメ、TikTok発でバズった楽曲、静かに話題な批評書。それらが持っている「良さ」とはなにか。その「良さ」をどんなひとがどう感じ取って、広がったのか。そういうことをいつもぐるぐる考えている。時代のムード、隣接領域のトレンド、作り手の過去の作品──。

 さまざまな付帯情報をたぐり寄せて、文脈をくっつけたりして、自分でも納得いくような視点が持てると、とても気持ちがいい。なるほど、そうだったのか!

 編集者はたぶんそういうことをずっとやっている生きもので、飲み会や会議でそういった語りを繰り返す。続けていると上手になるもので、そもそも自分では興味のないものでのもその「良さ」をうまく語れるようになったりする。それが仕事になっていく。

 続ければ癖になるもので、だからいつも、ものの「良さ」を言語化しようとしている。仕事に関係なく、生活しているだけで、ぜんぶを説明しよう、できるようにしておこう。そんな感覚がオートパイロットモードみたいにぐーんと起動している。起きているあいだずっと。ひょっとしたら、寝ているあいだも。

 っていうか言語化、ってことば自体がまたひとつのバズワードだ。言語化できると、他者に伝えることができる。言語化がうまいひと=仕事のよくできるひと、のように思われている。言語化がうまくていいね、といわれたりもする。どうしたらそんなに言語化が上手になるのですか、とかよく学生にもいわれる。

 けれどひとつ大きな落とし穴がある。

この記事は無料で続きを読めます

続きは、2110文字あります。
  • 本屋B&Bのフェアに参加しているのです

すでに登録された方はこちら